テクノデリック・初回盤(左)通常盤(右)
11/21/81発売
国内売上178,334枚(発売~1997年)
オリコン最高4位



Pure Jam
作詞:高橋幸宏・ピーターバラカン 作曲:高橋幸宏 編曲:YMO
出だしのビートルズのようなコーラスと裏腹に、とぼけた中近東風メロディーがウケます。曲中の「ミョンミョン」という音は細野氏の声をサンプラーに入れて使用。「ジャムでしょ」「それジャムでしょどーぞぉ」はピーター・バラカン氏がトランシバーを使って喋っているらしい。曲名の由来ですが、レコーディング中によく出前を頼んでいたアルファレコード本社ビルの1階にあった喫茶店「BAN」のトーストがめちゃんこマズかったのでそれを曲にしてしまった強引業です。出だしの歌詞でも「こんなマズいトースト食ったことない」とかおもいっきし歌ってます。(爆)ちなみに、この喫茶店もう存在しないので何言っても平気です。(笑)参考までに、アルファレコードは日本コロンビアのレーベルだったマッシュルームレコードを母体に「アルファ&アソシエイツ」を経て77年に設立。かつて田町芝浦にあったアルファレコード本社ビルは1階が喫茶店 、2~3階がオフィススペース、4階が社長室、5階がAスタジオ、6階が録音部という構造だったらしい。Aスタジオのコントロールルームには細野氏がよく寝てた伝説のソファーがあったと言われている。(笑)

Neue Tanz
作曲:YMO 編曲:YMO
細野氏がやりたがっていたケチャです。サンプラーの登場のおかげでバーチャルケチャが演奏できるようになりました。(祝)1981年の細野氏のガム旅行の影響でケチャやガムランをテクノデリックを持ち込むことになったようです。この曲はジョン・ケージのプリペアードピアノを参考にしているらしい。ウィンターライブでは教授がエレキギターで訳の分からんノイズを奏でていた。因みに、ウィンターライブのステージデザインは奥村靫正氏が担当。

Stairs
作詞:高橋幸宏・ピーターバラカン 作曲:高橋幸宏 編曲:YMO
このアルバムでは楽器の進歩が目覚しいですが、この曲は初心に帰ってアコースティック回帰路線です。途中、細野氏のベース、教授のピアノなどが聴けます。ただし、教授のピアノはEmu社の「Emulator」によるものです。

Seoul Music
作詞:坂本龍一・ピーターバラカン 作曲:坂本龍一 編曲:YMO
ソウルミュージックといってもジェームス・ブラウンさんのソウルぢゃなくて、韓国のソウルです。教授がこの年、「週刊FM」の取材でソウルを訪れたときに韓国の音楽に刺激されて作ったようです。結構、YMOの3人って刺激を受けやすいんですね。(笑)この時期、精神的に病んでいた教授がこの韓国旅行を機に元気を取り戻したらしい。一体、韓国で何があったのか???(笑)

Light in the Darkness
作曲:高橋幸宏・坂本龍一 編曲:YMO
古めのアンビエント的な音楽ですが、今聴くと古さを通り越して、もはや新しげに聴こえるかも?(笑)

Taiso
作曲:YMO 編曲:YMO
細野氏が教授に「ピアノでミニマルで」と注文つけて作らせた珍しい曲。ちゃんと命令通りに作ってます。(笑)ブルース進行。この曲はプロモビデオが制作されている。ビデオに登場するブルマ女子は当時ユキヒロ氏のマネージャーだった金井ひろみさん。元々は奥村靭正氏に師事していたデザイナーみたいです。ウインタ-ライブでは謎の集団がステ-ジに出てきて、ケイレンの運動を披露していた。元全学連の安保闘士であった教授のメガホン姿も貫禄あります。(笑)教授は学生運動時代にバリケード封鎖の中でドビッシーを弾いていた人物としてそっち方面の人の間では伝説化しているらしい。シングルカット曲

Gradated Grey
作詞:細野晴臣・ピーターバラカン 作曲:細野晴臣 編曲:YMO
散開後の細野氏の方向性を暗示するような曲でありました。ヒジョーにマイナーな曲ですが、2000年以降のHASYMOでは演奏されることもあったな。ジョージ・ハリソン的な発声など、アルバム全体を通してビートルズ色が強いと言える。

Key
作詞:細野晴臣・ピーターバラカン 作曲:細野晴臣 編曲:YMO
この曲は前作「BGM」の「Cue(手がかり)」に対する「Key(ヒント)」と言うことになってるらしいです。曲風が当時流行していたイモ欽トリオの「ハイスクールララバイ」に似てたことから「YMO版ハイスクールララバイ」とも呼ばれたりした。

Prologue
作曲:坂本龍一 編曲:YMO
このメロディーは教授の得意系ですね。Prologueと次のEpilogueには工場でサンプリしたボーリング音が使われている。因みに、前アルバム「BGM」ではデジタル録音を行いましたが、このアルバムでは技術的問題から「体操」を除いてアナログ録音に戻されたらしい。

Epilogue
作曲:坂本龍一 編曲:YMO
「プロローグ」の続きです。きれいなメロディーにインダストリアルな反復サンンプリング音がテクノしてます。解散説が噂されていたこの年の新宿コマ最終公演でのアンコールでこの曲がかかったときは皆泣いていたと言う、まことしやかな伝説があります。(笑)



★アルバム解説★
前作「BGM」で大コケ(商業的に)を食らったYMOですが、これに懲りて再び人気路線に戻すのかと思いきや、またまた訳のわからない曲を出してきました。(汗)このころは大衆のYMO離れも一段落して、今度は「YMO=暗い」というイメージが巷に定着する。ユキヒロ氏曰く、「BGMはロマンティックに暗い、テクノデリックはロジカルに暗い」です。だから、次作「浮気なぼくら」であんなにブッ飛んでしまったわけでもないでしょうが。。。(笑)このアルバムのコンセプトは「機械・工場」、コンセプトカラーは「灰色」。ということで、多くの曲にはインダストリアル系の音源が散りばめてあります。ちょうど松武氏の開発した、自称世界初のデジタルサンプラー(LMD649)が完成したころだったので、一気に使ってます。因みに、LMD649完成時にはすでにフェアライトCMIリンドラム(LM-1)のようなサンプリングマシンは存在していたハズなのでぶっちゃけ世界初ではなく国内初が正解かもしれん。(笑)LMD649のスペックはCPUにZ80、RAM64KB x 12個、8ビットでピッチは変えられず、音源保存メディアは音声用磁気テープという超原始的なものであった。その後、通称「オレンジ」というPC98に接続できる後継機も作られた。ちなみに、LMDの製作費は約50万円。正式名称は、「ロジック・村田・ドラム」の略だそうです。「村田」とは松武氏と一緒に開発に携わった東芝EMIの村田研治氏のこと。ロジック(649)は松武氏のユニット名。ドラムとなっているのは、当時はメモリの関係でサンプリ時間が1~2秒程度だったので、パーカッション的に使っていたためでしょう。実際ウンターライブではLMD649はユキヒロ氏が操作していた。結果的それがコロンブスの卵的に後にアートオブノイズ等をはじめとする多くアーティストに影響を与え、テクノ界にも波及していくことになる。このアルバムで使われている音源の多くは、実際に工場などでサンプリングされ、エンジニアの飯尾芳史氏が芝浦近くの工場に忍び込んで音を拾っていたら工場人に怒られたというエピソードがあります。当時のアルファのエンジニアやミキサーには飯尾氏の他にも、吉沢典夫氏、小池光夫氏、寺田康彦氏などが担当していた。スタジオ内の物を叩きまくってサンプリングした音もあったらしいですが、爆笑なのがウンコつき石油缶(←トラックシートより)。誰がそんなのを。。。(怖)細野氏曰く、「LMD649(サンプラー)が出てきたからYMOの解散が延びた」と後に発言してたぐらいなのでLMD649の登場はYMOにとっては重要であったことが伺える。機械モノ好きな教授は特にLMD649に関心が高かったようで、前作BGMではあれだけ不調だったにも関わらず、このアルバムでは坂本色が再び強くなってます。しかし、シンセや機材の進化により、もうバンドを組まなくても個人でYMOのようなアルバムは作れる時代になったため、このアルバム完成時点でYMOの存続意義はかなり薄れてしまい、あとは解散に向けたファンサービス?になることは各メンバーも自覚していたようです。因みに、テクノデリックとはテクノとサイケデリックの造語。このアルバムからプロデュース表記は「細野+YMO」となる。ジャケはYMOの3人は当初、民族衣装を着たロシア女性を望んでたわけですが、レコード会社側が、「YMOの顔が入っていないと売れない」と、無理やり初回プレスだけは3人のポラロイド写真(風の絵)が入ったジャケとなりました。結果的にはあんまし意味なかったようです。どちらのジャケも奥村靫正氏によるデザイン。